志偉粥館

陳小春のDC《鬥》についているDVDの「志偉粥館」の訳を一応。
かなり不確かな部分もあるが、まったく何もないよりマシという程度と思って下さい(広東語が堪能な方は笑ってやり過ごして下さい)。なので、コピペ、無断引用は御勘弁ください(間違っていると恥ずかしいので)。なお、文章長いのでゆっくりおつき合いください。
(《鬥》裏的DVD没有字幕、所以我試一試把「志偉粥館」翻訳成日文。)

友情篇

曾志偉(以下偉):小春、こんなに真面目に観客の前で話しをするのはめったにない機会だよ。まずは君の出自を。最初は1人でバックダンサー、その後、豹小子(参照→写真)、さらに風火海で3人。豹小子は。
陳小春(以下春):豹小子は、この時期、羅文(ローマン)はそんなに多くは仕事がなかった。だけど、専属だった。
偉:必ず彼についてなくちゃいけない。
春:他のところで踊っちゃいけないんだ。羅文についてからは、他の人には付かなかった。
偉:他のところには、たくさん仕事があった?
春:他のところには、もうたくさん仕事があったんだ。羅文のところで1年仕事をしたあと、突然、失踪したんだ。
偉:はあ? どうして。
春:なぜなら、(羅文は)本当にそんなにたくさん仕事があったわけじゃないんだ。とても閑だったんだ。
偉:失踪っていうのは、仕事を変えたの。
春:隠れたんだ。
偉:豹小子のイメージを払拭しようと思ったの?
春:いやそうじゃなくて、隠れたんだ。ダンスじゃない、豹小子じゃなくてもいいでしょう。
偉:じゃあ、ダンスはしてたけど、身分を変えたわけだね。
春:そう。身分を変えた。そしたらいっぱい仕事があったんだ。
偉:他の人のコンサートとか。
春:そうコンサートとか。
偉:89年、一番すごかった時は1か月に3、4万稼いだって。
春:そう。1年のうち9か月は香港にいなかったよ。
偉:すごいね。その時期に3、4万はすごいよ。
春:海外、また海外だもの。
偉:3万って、その時期は、朱[ロ米][ロ米]?
春:朱[ロ米][ロ米]、呂珊、莎姐が多かった。僕はまずTVBの舞踊員訓練班に受かったんだ。
偉:ああ、TVBの舞踊員訓練班の出身なんだね。
春:はい。それが終わったあと、あ、そのコースは全部はやってないんだけど、止めたんだ。1か月700ドルの電車賃だけ。終わったらすぐ家に帰って寝るだけだもの。
偉:ほかに楽しいことはなかったの。
春:遊べると思う? 早く帰って寝なって感じだよ。
偉:さて、3人のグループ「風火海」になったのは、自分で組んだわけじゃないよね。許愿(クラレンス・ホイ)がしたんだよね。
春:はい。それに自分は歌を歌うなんてまったく考えてなかった。豹小子の時は踊りたかったからだけど。羅文が着替えの時、僕ともうひとりがやってたんだけど、後ろには4人(の女性)がバックにいるでしょ(参照→写真)。まったく歌には力が入っていなかった。歌は僕には全く関係のないことだったんだ。
偉:新人だもの。歌手になることは考えなかったの。
春:ありえないよ。吐くよ。何を歌うって言うんだ。いい加減にせいよ、陳小春!だよ。それから「風火海」の時には、許愿は踊れるグループをすごく作りたかったんだ。それはたぶんその時「草[虫孟]」(グラスホッパー)、それから台湾の「小虎隊」が凄かったから。僕たち3人は踊れるんだから。「草[虫孟]」よりも「小虎隊」よりも踊れるんだから。
偉:えっ「草[虫孟]」より踊れるって、「草[虫孟]」は凄いよ。
春:(襟を直して)僕達はどこの出身だと思っているの。マイケルも同じ出身。ジェイソンは演藝なんだ。
偉:演藝家なの。
春:彼は中国舞踊を習ってたんだ。
偉:え、中国舞踊(笑)。
春:僕たちは全然違うの。
偉:じゃあ動きが違うじゃない。
春:そう。彼はね、どうだったかっていうと、練習のとき、時間があると古龍の本を読んだり。
偉:全然違うじゃない。
春:それから剣をもってきていて、休み時間には剣で型を練習しているわけ。わぁ〜って。
偉:何なんだ。許愿どうしてこんなヤツ選んだんだろうって(思わなかったの)。
春:その時はまだ知り合ったばっかりだったから。それから許愿は、あるところを予約してくれて、テストで歌ったんだ。うわ〜、ダメだよ。そしたら、サミー(誰か不明)が許愿に若者に機会をあげなよ、っていって。マイケルと僕は、じゃあ試してみるかな〜って。3人の中で一番かっこいいのはジェイソン。僕はっていえば。
偉:街で拾ってきたって感じかい。
春:はは、ゴミだよ。マイケルは一番しっかりしている。とっても楽しい日々だったよ。その時は一緒に住んでいたんだ。
偉:一緒に住んでたの?
春:僕は家を出たことがなかった。「風火海」が出来て初めて、家から出てんだ。その時、1か月(考える)9900ドル、1人。
偉:9900ドルならいいじゃない。前払いなの(デビューしたてなので、少し高い給料を払うが、これは貸しになっていて、あとで還すことだと思われる)。
春:そう前払い。還さなくちゃいけない。9900ドルで、家賃でしょ。
偉:払うの?
春:払わなくていいわけないじゃない。
偉:家賃と食事はついてるんじゃないの。
春:はあ、誰かそんなことをいったんだ。家賃でしょ、車代。車については可笑しいことがあるよ。僕たち3人の中では、唯一ジェイソンが免許をもってたんだ。その時はジープを運転してた。ジープで仕事に行ったりして、ある時は会社が車を手配してくれていたけど、車があるなら自分で運転しろってことになっていた。ある時、ジェイソンが、ガソリン代はって言うんだ。
偉:3人で割らないの。
春:なんで、それは僕達じゃなく、許愿に言えよって。
偉:許愿が払うんだ。食事は。
春:自分で。
偉:3人はどうして解散。
春:市場が僕達を必要としてなかったんだ。現実だよ。
偉:人気が出たらグループは必ず解散するって思ってるの。
春:そういうことを言っているんじゃなくて。僕は「晩9朝5」から今のいままで、ずっと仕事してきている。大きくても小さくても、仕事があればいいんだ、僕の考えはそうなんだ。だけと「風火海」の最初ころ、幸い僕はあったけど、マイケルとジェイソンは少し少なかった。反対になって考えれば、ちょっと気分が悪かった。
偉:じゃあ、2人が行かないなら僕も行かないって言えばいいんじゃない。
春:僕にそんな発言する権利あるわけないじゃない。
偉:3人とも他と契約する時は・・・・。
春:許愿。
偉:じゃあ君が映画撮る時も許愿。許愿がずっと見てたんだね。ある段階で解散というのも許愿が、それとも。
春:気分がよくなかったんだ。
偉:自分が儲けたものを出して、2人に分けなかったの。
春:ん。あなたはいいよ。(不明)
偉:そうだね。
春:「風火海」がデビューする前に、許愿は、ナイフやフォークの使い方なんかを教えてくれたり。
偉:そんなこともしたの。それはよかったね。話し方は。
春:話し方は・・・・・。
偉:そりゃそうだね。(やっていたら)こんなに話し方が出来てないってことはないものね。
春:(帽子をいじりながら)はいや。勝手にして。
偉:どうして、「草[虫孟]」は存在できて、君たちはダメだったと思う。
春:そのことについては考えた事がなかったな。僕達と何が違ったのか。たぶん当時、「草[虫孟]」はとにかく凄かった。一番凄かった時だから。僕達は何が足りなかったかっていうと、それは「歌」。
偉:「歌」が十分じゃなかった。
春:そう「歌」。
偉:ほとんどの人は、演じて、歌って、または踊って、歌って、映画撮って、映画を撮ってそれで初めてスターになるでしょう。そういう順序は。
春:許愿はそういう計画じゃなかった。踊って、歌ってじゃなく、まず映画。
偉:その3つの中で自分は一番何が。
春:好きか?
偉:そう。
春:ダンス。
偉:どうして。
春:簡単。複雑なことはない。ネガティブなことは何も周りにない。あるとき、伊館でショーがあった。サンディ(・ラム)が僕達3人をつれて出た。サンディが入っていった、そして僕達が(楽屋に)入った。当時、たくさんの人がそこにいた。黎明、劉徳華など、ほとんどの歌手が舞台裏にいた。ぼくたち3人が知ってるバックダンサーや、バックで踊ったことある人もいた。その時の楽屋での感覚っていったら、(手でエリックに噛み付くような動作をする)ある動物、獅子や虎や豹。そういう感覚で、僕達は、そこで待ってたんだけど。サンディがつれてきてくれて、ここにいるんだからね。家に帰ったら、3人とも同じ感覚だったんだ。まるで動物、お互いに「(うぉー)わい、わい。はーい。どう」「OKら〜(ううう)」みたいな。その感覚は・・・・分る?
偉:分るよ。たくさんの人が僕にそういうことを言う。多くの新人歌手がね、授賞式なんかで、新人がやってきて受賞を待っている時にね。「ねえ、いいよ。歌とってもいいよ」といって、顔を振り向ける時に、表情が変わるって。
春:僕もそうだった。某会社のアーティストが、「わい春爺、なんとかなんとか・・・、なあ、お前オレと(不明)」いったいいつの時代だと思っているんだ。それはないよね。
偉:怒る歌手だね。歌手で一番大変だったことは何?
春:大変なことは・・・。
偉:じゃあ、人気が出て、大変なことは。
春:歌手で大変だったこと、そんなに大変だったことは特にないけど、最初歌手になったとき、たくさんのファンが牌を上げてくれた。わあ、僕の牌がある牌があるって思った。それからだんだん牌を上げてくれる人が少なくなった。あるときは0の時もあった。あ〜、だけどその時、牌があがっているかどうかはかまわない。牌があがってるのが凄いのか? そんなことはない。自分が示す内容がいいかどうか、それが僕の目的だから。やあやあやあや(声援の声のまね)。そうじゃない。ある歌手は、ファンクラブのリーダーが、たんたんたん、やあやあやあやあって・・・・・。そんなこと。ぼくは内容がよければ、ステージでのパフォーマンスがよければ、それでいいんだ。だから、そんなことして、太鼓たたかなくていい。だけど、それが好きな人もいるからね。
偉:スターは、写真だとかサインだとか、それは苦痛?
春:僕は写真撮られるのが嫌いなんだ。ホントにいやなんだ。
偉:君は不思議だよ。どうして。
春:それはたぶんこれ(自分の顔を指して)。それに・・。僕に踊れとか、演技をしろというときには、ポーズとったりするのはいいんだ。だけど、写真を撮る時には、「小春、にこやかに笑って」って。僕は笑うようなことはないのに、笑うの? たとえば、ポーズとって、腕組んで、「横向いて、斜に。上に」。え、こんなの。雑誌のモデルなんか、きどってて。ヨーロッパの雑誌やどこの国の雑誌でもいいや、モデルはきどってるんだ。
偉:クールだもの。
春:何がクールだよ。気取ってるだけじゃない。僕はどういう心持ちでやったらいいのか分らないもの。だから僕は写真撮られるのは好きじゃないんだ。
偉:君が好きかどうじゃなくて、ファンがいいかどうかだから。(このあたりふたしか)
春:分かってるよ。もちろんその通り。だけど、好きじゃないことを僕にやらせないで欲しいんだ。
偉:(大陸から)もどってきてから、そうなのか、前からそうなの。香港のファンがそれとも大陸のファンが。僕もやられたことあるけど、大陸のファンは洋服掴んだり、たたいたり。
春:たたいたりだこじゃないよ、高い革のジャケットなのに。わいわい、写真撮るだけでしょ、お嬢さん。ああ、汚されちゃって(触られちゃって)。しょうがないよ、もう耐えるだけだよ。
偉:大陸のファンはそうだから、それは受け入れなくちゃいけない。自分がまだ人気が出る前、ダンサーだった時でもいい、「わあ、一緒に写真撮って」って言われた時には、「わあ、すごいな」って思って、「わ、小春」っていわれて、嬉しかったでしょう。だけど人気が出たあとは、「小春写真撮って」「わあ、めんどくさいな」って。でも最初の頃を思い出してごらんよ。その時も嬉しくなかったの。
春:その時の、写真撮られる時の気分は、「写真撮るの」「写真ね、はい」って感じ。
偉;嬉しかったでしょう。
春:思ったことないよ。だけど、嬉しかったことが2つあるんだ。1つは総統戲院。まだ建て替える前。銅鑼湾を歩いていて、総統戲院のところで、映画の看板があった。「晩9朝5 陳小春」。わ〜。考えてなかった。陳小春って名前がかかげられてるなんて。とても気分よくて、嬉しかった。もう1つは音楽で、《神阿救救我》の後、あ、小春は歌が歌えるんだって知ってくれて。香港へ帰ってきて、賞を貰えた。すごく嬉しかった。それは、ただ踊れるだけで、騒いでるやつじゃないって、思ってくれる。それに賞まで取ったんだ。さっきの話しに戻るけど、サインのことでいえば、僕は24時間芸能人は出来ないんだ。苦しいよ。
偉:自分の時間が必要。
春:絶対に必要だよ。つり合いとれないじゃない。
偉:自分がコント−ルする時間。
春:だって陳小春は、もともと自分自身だもの。はい陳小春って、いつでも(きどっては)いられない。仕事が終わったら、ひっくりかえってテレビ見て、DVD見て、ゲームしたり、休ませてよ。
偉:芸能人は時には辛いよ。ある時は、食事して歯にものが挟まったら、ひょっと手でとろうとして、あ、いけない誰か見てるかもしれない。だけど、歯も辛いじゃない。あれもダメこれもダメ。
春:僕はそんなことなないよ。(手を口にもっていく)。かまわない。こうだよ。
偉:それなら、楽しい芸能人だね。

参考
羅文の件
http://hkcl.hp.infoseek.co.jp/column/redstar.html
サンディ・ラムの件
http://d.hatena.ne.jp/hkcl/20050223#p1

家族篇

偉:小春は所謂親孝行ものと言われている。ママ、パパ、妹、弟にもね。家は厳しかったと聞いている。特にお父さんはすごく怖くて、鍵をかけて家に閉じ込め外に出さなかったって、さらに田舎へつれていかれて畑を耕したって。ホントに畑を耕してたの。どれくらい。
春:半年。
偉:なんでお父さんを怒らせてそうなったの。
春:なんでそうなったかよく覚えてないけど。
偉:幾つのとき?
春:その時は14歳。あ、思い出した、あれは非禮の事件で。
偉:ああ、非禮なら。
春:だけどそれは非禮という言葉で言い表せるものじゃない。子供の恋愛だよ、娘がいなくなったからって警察に届けて、警察がやってきて、家に父親がいたんだ。パパがドアをあけると、警察がいて「はあ?」もうそれで、怒っちゃって。怒っちゃって、田舎に帰るって。
偉:そのとき、結果的には、はっきりと非禮じゃないと分かった。女の子は友だちの家にいて、ママは・・・。
春:警察は僕が彼女をつれて行ったと思っていたんだ。僕は彼女を探し出して、「どうして家に帰らないんだ。母親に電話しろよ」っていった。彼女は「わっわわわ」って、彼女と母親は喧嘩したたのかわからないけど。じゃあ僕が君を家に連れて帰るよ。だって昨日は、君のママが家に来て、なんやらかんやら、って言った。僕が彼女をつれて家に帰った。そしたら、どうしたわけか、母親は警察に届け出ちゃった。僕は警察に送られちゃった。警察では、ささいなことなのに「わわわわ」と、僕は畏縮しちゃって、それでうなずいちゃって。そしたら、何んとかかんとか。それで訴えられちゃった。
偉:そのあと、母親が潔白だといったんでしょう。
春:これはさ、彼女は自分で家を出たのに、警察にいってしまうっていう、その行動と考え方はさ、で彼女のお母さんは・・・。
偉:それは(不明)画面に向かってありがとうっていいなよ。
春:ありがとう。おばさんに会ったことはあるんだ。その時は、すごく怒ったけど。いま思えば、ありがとうといえる。
偉:それでお父さんは怒ったわけね。田舎へ帰って畑を耕したんだね。
春:でも、楽しかったんだ。子供には楽しかったんだよ。どうしてかっていうと。
偉:学校に行かなくていい。
春:そうね。朝は牛(たぶん)を山につれていって放して、昼御飯を食べて、山を降りて、家で御飯を食べる。空菜(通菜=空心菜)。
偉:空菜だけ。
春:空菜、白飯、空菜、白飯。昼を食べたら、また牛をつれて水浴やら山へいって。ときには乗ちゃって。だって牛は大きくて、僕はちっちゃいからね。
偉:もし、(不明)。
春:だけど当然OKだよ。それから・・・、父親は(不明)帰ってこない。夜には、降りてきて、また空菜、白飯。
偉:夜は何するの。
春:夜はすることないよ。ラジオで、客家の山歌を聞いたりするぐらい。全部客家の村だから。
偉:家よりいいじゃない。6時に食事、7時に電気を消してでしょう。
春:知ってるの。
偉:ははは。どうやってすごすの。テレビもないんでしょう。
春:ある。考えたんだ。
偉:こっそり起きて見たの。
春:父親には分らせないように。
偉:お父さんは寝てたわけ。
春:父親は、4、5時には起きて仕事、土木工事だから。僕も夏休みには父親についてやったよ。5、6時にもどってきて風呂、風呂に入ったら、すぐに御飯。御飯を食べたら、ニュースを見る。15分ね。そしたらすぐに寝る。そうしたら、全部の電気は消す。父は部屋で寝てるから。僕達はどうしたかっていうと、できる限り、
偉:小さい音で、
春:小さい音じゃないよ。音出しちゃいけないんだ。光がもれないように布をかけて、父親に光りが見えないようにして、イヤホンを入れて。家族中で布を被って、ドラマを見てた。
偉:それは暑いじゃない。
春:大丈夫、家にはクーラーあったから。
偉:お金持ち。
春:こんな小さなヤツだよ。(イヤホンで)みんなで聞いて「お兄ちゃん聞かせてよ」「ちょっと待って」って、ドラマを見てた。いま考えると楽しかったよ。
偉:一家でいいよね。
春:ああ。
偉:苦と楽はね。人生においては、以前のことを思い出すと、当時とても苦しかったことも、それを耐え抜いたあとは、その苦しさは忘れられないものなんだ。それと苦と楽では、苦しい記憶は強く残るものなんだ。
春:その時は苦しいなんて思わなかったよ。だけど今振り返ってね、今は家はこんなだ、以前を思うと、ああ、とっても嬉しい、もうとても満ち足りている。とっても満足してる。感覚としてはね。先に苦があって、あとで楽があるというのは、いいことがあると思う。さらにこの業界では・・・
偉:帰ってきてからは、勉強していないの? 
春:中学(日本で言うと高校)までいったよ。
偉:中学までいったの、すごいじゃない。
春:学校行きながら、働いた。
偉:毎日、土木作業?
春:土木作業は、夏休みに父親にくっついて。
偉:ああ、夏休み、どこで。
春:どこでやってやるっていうんだよ。父親はだだだだだって。僕は側にいて、父親が汗拭いて休んでるときに、機械を持ってるんだ。すごく重いんだよ、その機械。持った事ないでしょう。
偉:レストランの厨房にいたのは?
春:厨房は、もっと小さかったかな。
偉:さらに子供の時なの!
春:16・・・、ちょっとまって考えるから。わすれちゃったけど、そのへんの時期で、やっぱり夏休みだった。
偉:厨房って、何つくってたの。皿洗い?
春:点心。つみれをちぎったり。
偉:ああ。
春:餡をちぎったり、牛肉をちぎったり。ホントにやってたんだよ。
偉:ほんとに。
春:ほんとうにちぎってたんだよ。
(唐突にはなしが変わる)
偉:一番かわいがってくれたのは母親だよね。
春:もちろん。ほとんどのことはママがやってくれた。父親はとにかく厳しい。座ってテレビを見て、何も話さない。
偉:は、そんななの。
春:ほんとに厳しいんだよ。父親は。ある時は、(不明)がここにあって。
偉:そんな。
春:父親は、鷹みたいなもの。
偉:君たちをみんな見てるわけね。
春:ママは(不明)。あるときはママが仕切るわけ。父親が怒っちゃうと母親がでてくるわけ。
偉:だから、お母さんとの仲が一番いいんだね。
春:ママはね・・。香港生まれ。100%田舎の娘。
偉:(不明)
春:父親はどうかっていうと。母と父の話しは可笑しいよ。父親はいままでに妻が3人いるんだ。
偉:はあ!すごいね。君の母親は?
春:ママは2番目。最初は大陸、離婚している。3人子供がいるんだ。ママは父親と結婚する前に香港である男の人と結婚して3人子供を生んでる。
偉:はいや。ああ。
春:さらに子供を3人産んだあと、父親は香港の生活のリズムが早くてなれず、大陸に帰って生活して、もう1人見付けたんだ。ママは我慢した。ママはとても純粋、他にはいない純粋な人なんだ。ママは父親に何も言わず、ただ我慢した。だから僕とママの仲は。。。この業界に入ったのは、ただ家族が気持ちよく生活できるようにという思いだけ。子供として、出来る限りのことをしたと思っている。僕は、ほとんど事はすでに決っていることだと思うけど、もし僕がこの業界に入っていなかったら、ママは5年は持たなかったと思う。
偉:もっと早く。
春:5年は無理だったと思う。もっと早く亡くなっていたと思う。
偉:天が5年を与えてくれたと。
春:天が決めたことなのかどうか分らないけれど、この5年、とても大切にしていなかったと思う。
偉:仕事。
春:仕事と遊び。
偉:こんなに早く亡くなるなんて考えなかった。
春:特に一番思い出すのは、12月29日に香港に戻ってきたこと。ママは1月2日、息が苦しくなって、病院に入った。それから2週間ベッドにいて亡くなった。泣いたりということは、この5年の間にすでに(してしまっている)。僕が覚えているのは、ハッピーバレーに住んでいて、ママが癌だ知ったとき。家に帰って食事をしているときに、パパも妹の夫もみんなそろっていた、僕だけが泣きじゃくった。涙が流れて。
偉:どうして君だけが、そんなに。
春:自分でも分らない。たぶん僕の家族にとって・・・、僕は初めて家族の中でこんな重大な事件が起こったからだと思う。僕は長男だけど、パパも弟も妹もとても冷静だったけど、自分だけが。結果的には、この業界にいたおかげで、この5年の間に自分の力で、1年また1年、また1年持たせたんだと思う。
偉:お母さんが亡くなってから、半年仕事をしてなかったけど。
春:家族が亡くなるってことを受け入れられなかった。それにその家族は、誰も代われない人。パパやママはたった1人しかない。もしママがいなかったら・・・。僕の中ではママは、世界で1番なんだ。僕のためにたくさんのことをしてくれた。さらにパパは仕事をしてママよりも稼いでいたけど、ママが家賃を払ってた。ママは家の下のレストランで仕事していた。それは僕が探してきたんだ。下のレストランで、皿洗いを募集していた。それで、「ママ、下で皿洗いを募集してるから、やてみたら」といった。ママはすぐにいって仕事した。
偉:君は何してたの。
春:美容院で。。。生きる、死ぬってことは。。。
偉:早くからお母さんは亡くなるって分かっていたの。
春:それは決っていたこと。。
偉:命を長らえたと。
春:そう。決っていたことだと思うけど。覚えているのは、マレーシアで映画を撮っていたとき、高速道路で撮影していた。妹が「ママが・・・・・」、僕は端のほうへいって話して、泣きながら電話で話して電話を切って、撮影では(平静を装って)ニコニコして。
偉:我慢して。
春:僕はどうしていいのか、どうやって心を平静に保てばいいのか。電話で涙がぼろぼろ出ているの、だけど撮影ではニコニコ、続けて撮ってって。
偉:最期は会えなかったの。
春:最期は会えたけど、話しは出来なかった。
偉:もし最期に何か言えたとしたら。
春:考えたことがなかった。何を話すかって。僕は出来るかぎりの方法をつかって、治したいって。だけど、思ってもみないほど早く亡くなってしまった。29日に帰ってきたというのは、天が決めたのかわらないけれど、僕が戻ってきてから亡くなったんだ。運命というものについて、僕もどうしてなのか分らないけれど、こいうふうになっているんだ。ママにとって、幸せだったのは、妹が女の子を産んでから亡くなったってことだ。
偉:君はダメだからね。
春:僕はダメだから。
偉:どの子も合わないの? 恋愛についてはなんでそんな悲惨なの。
春:僕は分らないんだもの。あなたはすごいの?
偉:妻は2人。子供は2人。君はひとりもいないじゃない。

*非禮とは、「ちかん行為」などのことをさす。
*小春非禮の件は香港ではかなり有名(警察の記録に残っているため、たぶんデビューしてから暴かれたと思う)で、「小春が好き」というと、「知っている?? 彼さ・・」ともったいぶって言ってくる人もあり。

愛情篇

偉:君は10数時間彼女を待ったことがあるんだって。なんておばかさんな。
春:おばかさんじゃないよ。
偉:彼女は、おばかさんっていったんでしょう。
春:彼女は直接にはいってないよ。彼女は唖然としたんだ。
偉:それは。
春:はじめて、女性にアタックしたとき、僕は彼女が本当に綺麗だと思ったんだ。
偉:それだけの価値があったんだね。
春:10何時間も待ってるとき、その当時待ってるときには、本を読む習慣もないし、聞く音楽もなかったし、ゲームもないし退屈で、ときどきドアのところを見ていたんだ。でも今振り返って考えると、ロマンティックでしょう。
偉:愛されることは幸福だというけれど、ある時は愛することの方がずっと幸せだと思うよ。目標があるもの。
春:享受することが出来る。
偉:そう。愛されることは、
春:愛したいと思うけど、やっぱりこれ(顔を指す)。
偉:どうして? 君はハンサムじゃないけど、醜男じゃないじゃない。
春:こんな顔だもの。
偉:かつては、一番いいのは、ママのような人が子供を産んでくれたらいいと言っていたけど、今は変わったの?
春:ママみたいな、あんな純粋な人は見つけられないと思う。どうしてこんなことを言うかと言うと、今は・・・
偉:時代が違うから。
春:そうそのとおり。今はたくさん情報があるしね。もし新しい友だちができても、すべてを見せてしまうことができない。
偉:君の中で一番完全だと思う・・・
春:完璧はないよ。
偉:君が一番必要だと思う妻というのは?
春:(顔をさして)綺麗な人。自分がすでにすごいからね。スタイルは重要なことじゃない。ここ(胸をさす)。
偉:胸?
春:胸はココで、ココはハート。分る?
偉:分る(笑)。
春:それから。
偉:心の優しい人?
春:それはもちろんだよ。あるアーティストは・・・
偉:ホントか嘘か。
春:ある人はさ、(口)でひとつ、(心)でひとつ、(頭)でひとつ。(ひとりの人物が)いくつにもわかれちゃってるんだ。まあ、黙ってよって。僕はかつて自分の彼女に言ったことがある。僕は君が好きだ。普段の君が好きだ。だけど僕は嫌いだ、君の外の顔が。それはすごいんだ。すごいんじゃなくて、全然別の(人格)なんだ。(1人の中に)2人の人がいるんだよ。たしかにだれでも2つの面があると思う。でも、わぁ〜。
偉:差が激しい。
春:わあ〜、えっ!そんななの。そんなにやる気や野心があって、仕事上ではそんないろんなことしちゃうの。普段デートしているときは、寄り掛かってくるようで、大人しいのに。とても気分がよくて、メローな感じなのに、仕事になると「ぎゃぎゃぎゃ」って。ダメダメ。
偉:何人かの彼女のなかで、。
春:何人だって?
偉:(笑)公に認めたのは(車)婉婉でしょう。婉婉は君にとって、最も理想に近い人なの?
春:婉婉はね、本来なら上手くいったと思うんだ。だけどある報道がね。僕がある女の子に惹かれていて、「彼女が好きだな。彼女はいいな〜」っていうのをマスコミと共有しようと思ったんだ。「僕は最近ね・・・」「最近なんかニュースはないの?」「僕ね最近、ある女の子がいいと思ってるんだ」「え、もう一緒になってるんだろう」「いまコミュニケーションを取ってるところだから」って、映画館でマスコミに言ったんだ。ところがどうしたことか、それがとんでもなく変わちゃった。「癩蝦毛想食天鵞肉」(ちっちゃな虫が綺麗な白鳥の肉を食べたいと想っている。身分不相応だという意味)。
偉:それで分かれちゃったの。
春:それで僕は「は〜」。映画館でマスコミと気持ちを共有しようとしただけなのに。それだけなのに、こんな風になっちゃって。
偉:他の人がいたわけじゃないでしょう。書いているだけじゃない。2人だけの問題じゃない。
春:だって僕達はまだ始まってなかったんだもの。
偉:まだ始まってなかったんだ。
春;まったく始まってなかった。コミュニケーションしているところだったんだよ。
偉:じゃあ、まだ彼女じゃないじゃい。始まってないのに、彼女って認めちゃったの。じゃあいまでも童貞ってこと?
春:それ以降にね(偉のひざをさわって)。
偉:はあ、それ以降にね。
春:コミュニケーションとってね。一番、スイートな想い出はね、僕は《神偸諜影(ダウンタウン・ジャドー)》を撮影しにいった(プラハで撮影)。
偉:彼女がたずねていった?
春:彼女はこないよ。そんなお金はないよ。デビューして時間がたってないもの。僕は路上で、絵を書いてもらったんだ。
偉:絵を書いてもらったの?
春:路上のいる画家にデッサンを書いてもらった。
偉:彼女をデッサンしてもらった。
春:彼女と僕を動物にして書いてもらったんだ。
偉:ホント?!
春:それを彼女にファックスした。元の絵は、家にあると思うけど、どっかにいちゃった。
偉:誠意がないね。
春:何回も引っ越したからだよ。
偉:その動物は何回も変わったの。
春:紙だもの。(答えになってない)
偉:それはどういう動物。
春:河馬かな・・・・。どっちにしても可愛いもの。
偉:河馬でもシマウマでも、どんな馬でもいいから、早く自分の馬を見付けなよ。自分の伴侶をね。だけど陳小春にいいたいことがあるんだ。まずひとつ、自分を卑下しちゃいけない。顔がハンサムじゃないとかいっちゃいけない。ほら僕みたいなら、卑下するけど、僕だってたくさん妻がいる。いや妻がいた(笑)。だから君はもっといいはず。それに絶対に改めなくちゃいけないのは、24時間芸能人をやらないこと。それは苦しいよ。もともと芸能人は芸能人なんだから、怖がることはない。こっちで普通の人、こっちで芸能人、いろんなことをしないこと。自分自身でいること。外と内が違う顔なんて人は、スターっていうんだ。いまの時代にはもういなくなってるだよ。それから、写真のことは、楽しい事にかえないと。すでに君は親孝行だし、ママはもういないけど、パパもいるんだ幸せでしょう、家族は仲がいいし、こんなにいい仕事をして、もうたくさんの人に幸せをあげてるんだ。だから重要なのは、どうやって自分の生活を楽しむかだよ。そして仕事を楽しめる芸能人になること。
春:知り合って長いのに、こういう事は教えてくれなかったじゃないですか。教えてくださいよ。僕にどんな欠点があるのか教えてくださいよ。(涙が流れる)
偉:今回のインタビューは、君の心の中に入って君を理解して、人生の問題、それを共有しようということなの。たとえば、さっきの写真のことでいえば、はじめて写真を撮ったことや、映画館で嬉しかったという、ごく普通の気持ちがもう無くなってしまったんだよ。芸能人は楽しくなくちゃ。「春爺! 席があるよ、座って座って」っていってるのに、どっかへ行っちゃうのは、すごくめんどくさい生活じゃない。たくさんの人が君にいろいろな事を頼んでくるのは当然のことなんだよ。24時間やってたら苦しいよ。でも、もう幸せなんだし。
春:だけど、・・・・・・・・、香港の芸能人は「苦・・・・・」。
偉:香港人は小さい村の人たちなんだよ。
春:どうしてそういう考えなの。「僕は君を知らないよ」とか、それに「嫌いなら何も言わない」って、それはばかじゃない。
偉:君はね、1人を見てすべての人がそうだと想ってはいけないよ。分る? ひとりがそうならすべてがそうじゃないんだ。僕は香港は世界でもっとも素晴らしい場所だと思っている。
春:はい。
偉:とても幸せな場所。
春:はい。
偉:香港人というのも素晴らしいと思っている。だけどここ数年、移民が流行ったり、いろいろな人が入ってきたり、いろいろなことがあって、香港は少し変わってきている。だけど香港はいいところ、香港にいる僕達は幸せだと思う。そういう環境を楽しまなくては。歌手や芸能人を大切にしてくれるでしょう。たくさんの人が香港をいいと思っている。「わあ、あなた香港人なの」と。香港はだんだんと環境が変わってきているけど、それでも香港の地位というのは高いと思っている。そこで、こんな素敵な香港人で、歌手で俳優で人気のスターが、足りないのは妻だけだよ。君はがダイヤモンドのような妻を探すのをまっているよ。ダイヤが好きでしょう。どこで探すの。振り返ってごらんよ。
春:(ダイヤを見せびらかす)
偉:だから、自分が楽しくなれる方法を探すことだよ。
春:僕は、もともと楽しい人間だよ。
偉:そうでしょう。いろんなインタビューで、自分で自分を苦しめてるんじゃないの。見た目は何もなさそうなのに、心の中にはたくさんの怒りを溜めていて。
春:僕はまだたくさんの事を吐き出してないよ。
偉:(不明)
春:あなたを目標にするよ。
偉:OK。

*車小姐は小春が振ったと言われている。
*内と外の顔が違うのは張栢芝ではないかと言われている。小春の話し方からもそう言う感じがするが・・・。
<終わり>


訳すにあたり、何回も何回もインタビューを聞き直して、そのたびに私は涙が流れた。
最近、小春は少し変わったような気がする。もっとも顕著なのはファンに対する態度で、これは香港ファンシーの誰もが認めている。以前は、少々そっけない時も多かったが、最近では車の窓を開けて、ちゃんと顔を見せてくれたり、自ら進んでファンに話かけることも多い。音楽賞でも「多謝歌迷」と言うことは大変稀だったが、最近ではそれも言う。この変化は、お母さんが亡くなり約半年の休みを取った後からなんとなく感じているものだが、ここにきてさらにやさしくなったのは、もしかしたらこのインタビューで曾志偉が小春に助言をしてくれたせいではないかと思っているのだが・・・・。
香港ファンシーの中に、ごくごく最近ファンになったという15歳の子がいる。古株香港ファンシーたちは彼女に「以前はこんなじゃなかった。あなたは幸せだよ」と言っている(笑)。